尾道を歩く

海が見えた。海が見える。

五年振りに見る、尾道の海はなつかしい。

— 林芙美子『放浪記』

私は千光寺にある鼓岩から見下ろす尾道の景色が大好きだ。尾道水道を行き交うフェリーや漁船のエンジン音、造船所の鉄を叩く音が聞こえるだけで、自動車の騒音といった日常の生活音は入ってこない。市街地は山と海に挟まれ細長く東西に伸び、尾道水道の先は向島、瀬戸内海の島々が重なるといった特徴的な景観を楽しむことができる。

以前もこのブログで書いたのだが、私は休日にふらふらすることが趣味である。国内だと比較的西日本に出張することが多い。そして、岡山エリアであれば休日を過ごす候補地に上がるのが尾道だったりする。倉敷から程良い距離にあるからだ。

私の場合、五年振りではないが、先日尾道に立ち寄った。尾道駅北口で食事を済ませ、千光寺を目指す。行ったことがある人はわかると思うが、麓から千光寺を目指すにあたり、大きく分けて3ルートある。

  1. 自家用車
  2. 千光寺ロープウェイ
  3. 徒歩

観光ガイドなどを見ると、どれも2番と3番を合わせたプランが紹介されている。行きはロープウェイで山頂まで登り、千光寺周辺を散策しながら商店街側に下る。

1番は、他にも寄りたい場所があり移動時間を削りたい。体に負担が少ないプラン。しかし、野良猫に誘われ、坂を下ったものならば、何かしら2番、3番が絡んでくる。その場合、割り切って麓まで下りる方が良いかもしれない。

3番は、背に瀬戸内海を感じつつ、ひたすら足元を見ながら山頂を目指すプラン。上りの階段はとても体力を消耗する。

さて、私はすでに北口から持光寺下あたりまで歩いていたのでルートの選択を迫られた。その場所からONOMICHI U2の駐車場に戻るのも少し距離がある。またロープウェイまで歩くのもそこそこある。

いろいろと迷った挙句、久々の尾道ってこともあり、私は坂の街を堪能すべく3番を選択した。

麓から山頂までの距離は約1km 程だが、なんせ上り坂が続くため、歩くと30分程かかる。肩で呼吸をしながら、やっとの思いで山頂の展望台に着いた時、運動不足の自分に少し笑えてきた。そして、売店で買った水がすごくおいしかった。これはこれで忘れられない思い出になった。

以前、野良犬の群れに襲われかけた円筒状の展望台は、瀬戸内海を以前より高い位置で一望できる綺麗な展望台に変わっていた。月日が過ぎれば、いろいろと変わるものだ。

そうだ、今度は新開地区を中心にお酒を飲みながらふらふらしてみよう。飲み屋街も何か新しい発見があるかもしれない。

千光寺の紅葉の見頃は例年11月中旬~下旬頃となっている。広島といえば宮島の紅葉が有名だが、逆に尾道で過ごすのはどうだろうか?どことなく環境は似ているし、宮島に比べ観光客が少ない分、自分のペースでゆっくり過ごせると思う。

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